経営事項審査(経審)は、公共工事を直接請け負おうとする会社の経営規模・経営状況・技術力などを審査する制度です。取引先を確認するときは、審査の基準となる日付と工事業種を確かめ、P点の内訳を見る順番で進めます。P点は「総合評定値」という総合的な点数です。ただし、今回の工事の施工品質や、現在の資金繰りを保証するものではありません。電気工事・管工事を任せるなら、その業種の工事高や技術職員の情報を、実績・現場体制とあわせて確認します。
この記事は、民間取引で依頼先を調べる元請け・法人の設備担当者向けです。制度の説明は2026年10月時点で、2026年7月施行の改正も踏まえています。
経審とは何のための審査か
経審は、国や地方公共団体などの公共工事を直接請け負おうとする建設業者について、経営に関する客観的事項を審査する制度です。国交省の制度説明は、経営状況と経営規模等の評価、総合評定値の関係を整理しています。
公共工事の入札参加資格の審査では、経審にあたる客観的事項に加え、発注者ごとの評価も行われます。したがって、経審のP点と、特定の自治体等の格付けは同じものではありません。
P点は総合評定値の請求により算出されます。経審と同時に請求できるため一体で扱われることが多いものの、制度上は任意請求です。発注機関が請求を義務づける場合もあります。
民間工事の取引先確認では、経審は比較資料の一つです。民間工事や下請工事を中心とする会社が経審を受けていない場合もあります。検索で見つからないことだけを理由に、無許可や経営不安と判断しないでください。
結果を入手したら日付・名義・業種を確認する
結果の入手先は、建設業情報管理センター(CIIC)の「経営事項審査結果の公表」です。CIIC公式サイトと京都府の案内からも案内されています。接続できない場合は、取引先から最新の結果通知書の写しを提出してもらい、以下の手順で照合します。
資料を受け取ったら、次の順で照合します。
- 会社を特定します。 商号と許可番号を見積書・契約予定の名義と照合します。
- 審査基準日を見ます。 原則として決算日を基準にするため、現在の状況との間に時間差があります。
- 結果の通知日を見ます。 審査基準日と通知日を混同しないようにします。
- 対象業種を確かめます。 建築工事のP点を、電気工事の評価として扱わないようにします。
- 比較条件を記録します。 過年度と比べるときは、制度改正や申請上の集計条件も確認します。
公共工事の受注に関する有効期間は、国交省の案内で、審査基準日から1年7か月と説明されています。結果通知書を受け取った日から数えるものではありません。これは建設業許可そのものの有効期間とは別です。民間取引の調査では、有効期間に加えて「どの時点の会社の情報か」を重視しましょう。
P点と5つの評価項目の見方
2026年7月施行の国交省資料では、総合評定値は次の式です。
P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W
| 項目 | 主な評価内容 | 発注者が追加で確かめること |
|---|---|---|
| X1 | 業種別の完成工事高です | 今回に近い工事の規模・内容の実績があるか |
| X2 | 自己資本額と利払前税引前償却前利益です | 増減の理由、直近の事業変化はあるか |
| Y | 経営状況です | 点数の背景となる財務の変化、説明できる窓口があるか |
| Z | 技術職員数と元請完成工事高による技術力です | 今回の現場へ配置できる技術者は誰か |
| W | その他の審査項目で、社会性等を評価します | どの制度・取組が評価に反映されたか |
完成工事高は、完成した工事の売上高です。元請完成工事高は、そのうち元請けとして完成した工事の売上高を指します。自己資本額は、会社の資本のうち返済義務のない部分を示します。利払前税引前償却前利益は、利息・税金・減価償却費を差し引く前の利益を表す指標です。
P点が近くても、工事高が大きい会社と技術職員の評価が高い会社では、点数の構成が異なります。総合点の大小を、そのまま今回の工事への適合度と考えないようにします。
完成工事高は、これまでの工事量をつかむ入口です。設備更新の実績を見たい場合は、受注した業種に加え、今回の条件に近い経験を聞きます。稼働中の工場での施工、夜間の切替え、断水調整などが確認対象です。
前年比較で気をつけること
2026年7月1日以降の申請では、社会保険加入に関する審査項目の削除、自主宣言制度の評価項目の追加、建設機械の対象拡大等が行われています。改正前後のW点やP点の変化を、すべて会社の実態の変化として読むことはできません。
また、社会保険の審査項目が削除されたことは、保険加入の確認が不要になったという意味ではありません。取引開始に必要な資料は、会社の適用関係に応じて別に確認します。
点数が大きく動いていたら、直ちに良否を決めず、「工事高の変化」「技術者の増減」「制度改正」「事業承継などの組織変更」を質問します。会社が説明する内容と資料の日付をそろえることが大切です。
取引先確認に使う記録表
社内では、点数と未確認事項を同じ表に残すと、再確認しやすくなります。次は法定様式ではなく、購買担当向けの記録例です。
| 記録欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 確認対象 | 商号・許可番号・依頼予定の業種を記入します |
| 資料の時点 | 審査基準日・通知日・取得日を記入します |
| 数値 | 対象業種のP点・工事高・技術職員の情報を記入します |
| 比較上の注意 | 前年と異なる集計条件や制度改正を記入します |
| 面談で聞くこと | 配置予定者、現在の受注状況、今回に近い実績を記入します |
| 判断の保留事項 | 回答待ちの項目と、次の確認担当・予定日を記入します |
取引先への質問は、次の文例を工事条件に合わせて使えます。
電気工事業/管工事業の経審結果について、審査基準日と最新の結果通知書をご共有ください。前年から完成工事高・技術職員の情報・経営状況の評価に変化がある場合は、集計条件や制度改正による影響も含め、主な理由をお知らせください。あわせて、今回配置できる技術者と現時点の施工体制を確認させてください。
経審で確認できる情報と、面談でしか分からない情報を分けると、追加質問が具体的になります。「P点が高いので任せる」から一歩進め、今回の工程と体制を確かめましょう。
出典と関連する記事
制度概要と有効期間は国交省、点数の構成と改正事項は国交省の2026年7月施行資料を参照しています。許可の有効性や施工体制の確認は、別に行います。
- 許可情報の検索は、建設業許可の調べ方で扱います。
- 許可の満了日が過ぎて見える場合は、期限切れの確認手順で扱います。
- 総合的な選定は、協力会社の選定基準で扱います。
- 資料の回収は、取引開始時の必要書類をご覧ください。
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