電気工事の見積書は、大きく**「直接工事費」(材料費と、取り付ける人の労務費)と、「諸経費」(仮設の費用、現場を管理する費用、会社を運営する費用と利益)**に分かれます。「一式」と書かれた項目は、含まれる作業・数量・対象外の範囲を確認します。「諸経費」は割合で計上されることが多いため、金額の大小より、何が含まれていて、何が別に請求されるのかを確認することが大切です。
建設業法では、2025年12月12日の改正法の完全施行により、建設業者は材料費・労務費と、法定福利費などの「適正な施工に不可欠な経費」の内訳を記載した見積書を作るよう努めることになりました(第20条第1項。2026年10月時点)。また、注文者が請求した場合は、建設業者は契約成立までにその見積書(材料費等記載見積書)を交付する義務があります(第20条第4項)。
この記事では、受け取った見積書の項目の意味を解説します。複数の見積もりの比べ方は「電気工事の見積もりの取り方と比べ方」で扱います。
見積書の全体の形
見積書の形は会社によって違いますが、国の公共建築工事の積算基準(国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」)では、工事費を次のように組み立てます。民間の見積書を読むときも、費用を整理する参考になります。
| 階層 | 中身 |
|---|---|
| 直接工事費 | 工事の目的物を作るための費用(材料・機器、取り付けの手間など) |
| + 共通仮設費 | 工事全体で共通に使う仮設の費用(現場事務所、仮設の電気、養生、片付けなど) |
| = 純工事費 | |
| + 現場管理費 | 現場を管理・運営する費用(現場の社員の給料、法定福利費、保険料、施工図の作成など) |
| = 工事原価 | |
| + 一般管理費等 | 会社を続けていくための費用(本社の経費)と利益 |
| = 工事価格 | |
| + 消費税等 |
民間の見積書では、共通仮設費・現場管理費・一般管理費等をまとめて「諸経費」「現場経費」と1行で書くこともよくあります。
直接工事費の項目
電気工事の見積書では、直接工事費が工事の種類ごと(工種ごと)に分かれて書かれます。
| よく見る項目 | 中身 | 確認すること |
|---|---|---|
| 幹線設備・動力設備・電灯コンセント設備・照明器具など | 幹線は建物内で電気を配る主要な配線、動力は機械などへの電源です。工事の種類ごとにまとめて記載されます | 依頼した範囲がすべて入っているか |
| 機器・器具費 | 分電盤、照明器具、変圧器などの機器 | メーカー・型番。「同等品」の場合は何を想定しているか |
| 材料費(ケーブル・配管など) | 電線、ケーブル、電線管、ボックス、支持金物 | 数量の単位(m、本、個)と根拠 |
| 労務費・取付費・施工費 | 取り付け・配線をする人の手間 | 材料費に含めた「材工共(ざいこうとも)」か、分けているか |
| 撤去費・処分費 | 既存設備の撤去と、産業廃棄物の処分 | 含まれているか。運搬費は別か |
| 試験・調整費 | 絶縁抵抗の測定(漏電しにくい状態かを確かめる検査)、動作の確認など | 含まれているか |
| 夜間・休日の割増 | 営業時間外の作業の割増 | 依頼した作業時間と合っているか |
「材工共」と「材工別」
- 材工共(材工一式): 材料費と取り付けの手間を合わせて、1つの単価で書く方法。項目が少なく見やすい一方、労務費がいくらか分かりません。
- 材工別: 材料費と労務費を分けて書く方法。工事内容の変更や、ほかの見積もりとの比較がしやすくなります。
改正建設業法の考え方では、労務費を見える形にすることが重視されています。国土交通省は、労務費・材料費・法定福利費(事業主負担分)などを分けて書く見積書の様式例を示しています。建設業退職金共済制度(建設現場で働く人の退職金のための制度)の掛金や、安全衛生経費(事故や健康被害を防ぐための費用)も記載する形です。
「一式」の中身
「一式」は、数量で数えにくいものや、細かな部材をまとめたときに使う書き方です。それ自体は珍しくありませんが、次の場合は中身を確かめましょう。
- 金額が大きい「一式」: 何が含まれるかを、内訳か注記で出してもらう
- 「雑材料一式」「消耗品一式」: 小さな部材や消耗品。直接工事費に対する割合で計上されることがある
- 「〇〇工事一式」: 工事の範囲そのものが「一式」になっていると、どこまでやるのかが分からない。範囲の外のことも確認する
諸経費の中身
国の積算基準では、それぞれ次のような費用が含まれます(抜粋)。
| 区分 | 主な中身 |
|---|---|
| 共通仮設費 | 準備費、現場事務所・倉庫などの仮設建物、仮囲い、安全標識・交通誘導などの環境安全費、工事用の電気・水道料金、屋外・敷地周辺の跡片付けとそれに伴う発生材・端材等の処分、共通の機械器具 |
| 現場管理費 | 労務管理費、印紙代などの租税公課、工事保険などの保険料、現場の社員の給料、施工図の作成費、法定福利費、建設業退職金共済の掛金、通信交通費、近隣への補償費 |
| 一般管理費等 | 本社の運営の費用(役員・社員の給料、事務所の費用など)と、利益 |
既存設備の撤去・処分費まで、共通仮設費に含まれるとは限りません。直接工事費の撤去費・処分費とあわせて、計上する項目と重複の有無を確認します。
民間の見積書の「諸経費」が、この全部を含むとは限りません。たとえば、交通誘導員、駐車場代、高所作業車のリース代などが、別の行に書かれている場合もあります。「諸経費に何が含まれ、何が含まれないか」を聞いておくと、追加費用が生じる条件を確認できます。
法定福利費
法定福利費は、健康保険・厚生年金・雇用保険などの保険料のうち、会社(事業主)が負担する分です。建設業法施行規則では、「適正な施工を確保するために不可欠な経費」として、法定福利費、安全衛生経費、建設業退職金共済の掛金が挙げられています。別の行に記載された法定福利費などを、根拠なく一律に削るのは避けます。算定の前提を確かめ、必要な額を確保してください。
金額の根拠が分からないとき
まず、数量・単価・作業条件と、別途費用の有無を確認します。労務費や法定福利費などは、算定の前提を説明してもらい、必要な費用を確保します。
複数社の見積もりの比較や、値引きを相談するときの注意点は、電気工事の見積もりの取り方と比べ方で扱います。
確認するときの文例
見積書の中身を確認するときは、次のような文面で問い合わせると、相手も答えやすくなります。
件名: 〇〇工事のお見積書について(ご確認のお願い)
〇〇株式会社 〇〇様
お見積書をお送りいただき、ありがとうございます。
社内で検討するにあたり、次の点を教えていただけますでしょうか。
1. 「〇〇工事一式」に含まれる作業の範囲
2. 諸経費に含まれる費用と、別途となる費用(交通誘導、駐車場、高所作業車など)
3. 既存設備の撤去・処分費が含まれているか
4. 照明器具の型番と、同等品を想定している場合はその候補
5. 作業時間(夜間・休日)の前提
〇月〇日までにご回答いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
見積書を受け取ったときのチェックリスト
- 依頼した工事の範囲が、すべて項目に入っている
- 範囲に含まないものが、注記で分かる
- 機器・器具の型番(または同等品の考え方)が分かる
- 金額の大きい「一式」の中身が分かる
- 撤去・処分・運搬の費用の扱いが分かる
- 諸経費に含まれるもの、別途のものが分かる
- 夜間・休日、停電作業などの前提が、依頼の条件と合っている
- 税込み・税抜きの別と、見積もりの有効期限が書いてある
- 工程ごとの作業日数の目安が書いてある
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この記事は、受け取った見積書の項目の意味と、不明点の確認に絞っています。依頼書の作成や複数社の比較は、次の記事を参照してください。
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