工事の見積依頼書には、工事の目的・範囲・仕様・希望工期・現場の条件・見積書の形式・提出期限をそろえて書きます。撤去・処分を含むか、停電・断水ができるかも明記し、依頼する全社に同じ条件を伝えるのが基本です。仕様(機器の性能・材質・型番など)や図面が未確定なら、その旨を書きます。現地調査や提案を求める範囲も示してください。
以下に、電気工事・管工事で使える項目表と、コピーして記入できるひな形を掲載します。見積期間などの制度の説明は2026年10月時点です。
見積依頼書がないと起きること
口頭やメール1本で見積もりを頼むと、会社ごとに想定する工事の範囲が違ってしまい、次のようなことが起こりがちです。
- 依頼先によって撤去・処分費を含むかが違い、金額を比べられない
- 夜間・休日の作業が必要なことを伝えておらず、契約後に追加費用になる
- 既存の図面がないことを後から知らされ、現地調査のやり直しになる
- 工期に無理があり、契約の直前に条件を変えることになる
見積依頼書で条件をそろえておけば、届いた見積もりを同じ物差しで比べることができます。
見積依頼書に書く項目
「労務費」は作業に必要な人件費です。材料費・労務費・経費を分けて示してもらうと、見積もりの内容を確認しやすくなります。
| 区分 | 書く項目 | 書き方の例・ポイント |
|---|---|---|
| 基本 | 件名、依頼日、依頼者(会社・部署・担当者・連絡先) | 件名は「〇〇工場 第2棟 照明LED化工事」のように場所と内容が分かるように |
| 工事の内容 | 目的、工事の範囲、数量、仕様(メーカー・型番の指定か、同等品可か) | 「既存の器具〇台を撤去し、LED器具に交換」など。範囲の外のことも書く(「天井の補修は含まない」) |
| 撤去・処分 | 既存設備の撤去と、産業廃棄物の処分を含むか | 含むか含まないかを必ず明記する |
| 工期 | 着工の希望時期、完成の希望時期、工事できない日・時間帯 | 「営業時間(9〜18時)は作業不可」「土日のみ可」など |
| 現場の条件 | 所在地、建物の用途、搬入経路、駐車場、作業場所の制約、停電・断水ができるか | 停電・断水の可否と時間帯は、費用と工期に大きく影響する |
| 事前に知らせる事情 | 地中の状態、周辺の環境(住宅が近い、騒音の制限など)、アスベストの調査結果の有無 | 分かっている範囲で書く |
| 資料 | 既存の図面、設備の一覧、写真、前回の工事の記録 | 「図面なし」なら、そう書く |
| 現地調査 | 調査の可否、候補日、立ち会う人 | 複数社を同じ日に呼ぶか、別の日にするか |
| 見積もりの形式 | 内訳をどこまで分けるか(材料費・労務費・経費)、「一式」の扱い、税込み・税抜き、有効期限 | 「工種ごとの内訳を記載」「一式の場合は内容を注記」 |
| 契約の条件 | 支払いの時期と方法(前払い・工事の進み具合に応じた支払い・完成後)、検査と引渡しの方法、保証や契約不適合責任(契約内容と異なる工事への責任) | 社内の取引条件があれば、ここで示す |
| 提出 | 提出の期限、提出先、質問の受付期限と方法 | 質問への回答は、全社に同じ内容を送る |
| 選定 | 選ぶ基準(金額だけでなく、工期・体制・実績なども見るか) | 書いておくと、提案の質が上がりやすい |
そのまま使えるひな形
次の文面を、社内の様式に合わせて書き換えて使ってください。〔 〕の部分を埋めます。
「法定福利費」は事業者が負担する社会保険料など、「安全衛生経費」は安全対策に必要な費用です。「建退共掛金」は、建設業退職金共済制度の掛金を指します。
見積依頼書
〔会社名〕御中
〔依頼日〕
〔依頼者の会社名・部署・担当者名〕
〔電話・メール〕
下記の工事について、お見積もりをお願いいたします。
1. 件名
〔例: 〇〇工場 第2棟 照明LED化工事〕
2. 工事の目的
〔例: 照明器具の老朽化と、電気使用量の削減のため〕
3. 工事の範囲
(1) 〔例: 第2棟1階 作業場の既存照明器具(〇台)の撤去〕
(2) 〔例: LED照明器具(〇台)の取り付け、配線の接続〕
(3) 撤去品の処分: 〔含む/含まない〕
範囲に含まないもの: 〔例: 天井の補修、制御盤の改修〕
4. 仕様
〔メーカー・型番の指定/同等品可/提案を希望〕
5. 工期
着工の希望: 〔〇年〇月頃〕 完成の希望: 〔〇年〇月〇日〕
工事できない日・時間帯: 〔例: 平日8〜17時は稼働中のため不可〕
※希望の工期が難しい場合は、可能な工期をご提案ください。
6. 現場の条件
所在地: 〔 〕
停電・断水: 〔可(〇時間まで、〇曜日)/不可〕
搬入・駐車: 〔例: 搬入口は北側。駐車は2台まで〕
その他: 〔例: 敷地の東側が住宅に接しており、夜間の騒音に配慮が必要〕
7. 添付資料
〔例: 平面図(〇年作成)、器具の一覧、現況写真〕/〔図面なし〕
8. 現地調査
〔可。候補日: 〇月〇日、〇月〇日。立ち会い: 〇〇〕
9. 見積書の形式
・材料費、労務費、経費が分かる内訳を記載してください。
・経費は法定福利費、安全衛生経費、該当する建退共掛金などを分けて記載してください。
・「一式」と記載する項目は、含まれる内容を注記してください。
・税抜き・税込みの別と、見積もりの有効期限を記載してください。
・工程ごとの作業日数の目安を記載してください。
10. 契約の条件(予定)
支払い: 〔支払日: 〇年〇月〇日/前払い・出来高払い・完成払いの別と各支払日〕
支払方法: 〔銀行振込など〕
検査・引渡し: 〔例: 完成後に立ち会い検査を行い、引渡し〕
その他: 〔例: 弊社の工事請負契約書の様式を使用〕
11. 提出
提出期限: 〔〇年〇月〇日〕
提出先: 〔メールアドレス〕
ご質問: 〔〇月〇日までにメールで。回答は依頼先の全社に共有します〕
12. 選定について
金額のほか、工期、施工体制、類似工事の実績を総合して決定します。
選定の結果は、〔〇月〇日〕頃に全社にご連絡します。
以上
下請発注に使う場合は、社内の締日・支払日だけで決めず、建設業法上の支払期限に収まる日を記入してください。特定建設業者による対象の下請取引には、引渡しの申出から50日以内のできる限り短い期間に支払期日を定めるルールがあります。適用対象やほかの支払期限は、協力会社への支払い条件で確認してください。
建設業法で決まっていること
注文者は、条件を示し、見積期間を設ける
建設業法第20条第3項は、注文者に工事の条件をできる限り具体的に示すことを求めています。対象は、請負代金の額を除く契約書の記載事項です(第19条第1項)。契約前(入札では入札前)には、見積もりに必要な期間も設けなければなりません。最低限の期間は、建設業法施行令第5条の9で次のように定められています。
| 工事1件の予定価格 | 見積期間 |
|---|---|
| 500万円未満 | 1日以上 |
| 500万円以上5,000万円未満 | 10日以上(やむを得ない事情があれば、5日以内に限り短縮できる) |
| 5,000万円以上 | 15日以上(同上) |
見積期間は、具体的な条件の提示日と、契約締結日または入札日の間に確保します。国交省ガイドラインの例では、4月1日に条件を示した場合、1日以上の区分なら4月3日以降、10日以上なら4月12日以降、15日以上なら4月17日以降が契約・入札日です(短縮や、受注予定者が期間満了前に見積書を交付した場合を除きます)。「1日以上」は最低限の決まりです。現地調査が必要な設備工事では、調査の日程も含めて、余裕のある回答期限を設定しましょう。
依頼書に反映しておく条件
分かっている地中の状態や周辺環境など、工期・代金に影響する事情は「現場の条件」に記載します。希望工期が難しいときの代案と、材料費・労務費・経費や工程ごとの作業日数が分かる見積書も求めておきましょう。
著しく短い工期を避けるための段取りは設備工事のスケジュールの立て方、見積もり・契約に関する制度の詳説は建設業法の改正で発注者が気をつけることをご覧ください。見積書の各項目の意味は電気工事の見積書の見方で扱います。
送る前のチェックリスト
- 工事の範囲に「含まないもの」を書いた
- 撤去・処分を含むかを書いた
- 停電・断水の可否と、作業できる時間帯を書いた
- 分かっている地中・周辺環境の事情を書いた
- 図面・資料の有無を書いた(ないなら「なし」と書いた)
- 見積もりの内訳の形式を指定した
- 回答期限は、現地調査と見積もりの作成に足りる日数か(法定の見積期間を下回っていないか)
- 質問への回答を全社に共有する方法を決めた
- すべての依頼先に、同じ内容の依頼書を送る
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依頼条件を社内で決める手順や、届いた見積もりの比較・選定は、次の記事で扱います。
- 依頼書を書く前に、社内で決めておくこと(範囲・予算・工期・停電や断水)は「工事を頼む前に決めておく10のこと」
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