法人の電気工事費用は、工事の種類と数量に、停電・施工場所・撤去・試験などの条件を加えて見積もる必要があります。照明の台数や配線の長さが同じでも、工場の操業を止める工事と、空室で行う工事では条件が違います。
この記事では、2026年10月時点で、地域・規模・工事範囲をそろえて示せる公表価格を確認できていないため、相場金額は掲載しません。代わりに、予算を立てるための工種別の内訳と、概算見積もりに必要な情報を整理します。
工種別に見る費用の構成
「電気工事一式」という総額から予算を考えるより、何を新設・更新するかを分けると、費用が増える理由を把握しやすくなります。
| 工事の種類 | 主な費用項目 | 費用差が出る条件 |
|---|---|---|
| 照明の更新 | 器具、取付け、配線変更、撤去・処分、点灯確認 | 天井高、足場、既設配線の利用、営業中の養生 |
| コンセント・分岐回路の増設 | 器具、配線、配管、分電盤の改造、試験 | 盤の余裕、接続機器の容量、配線経路 |
| 幹線・動力の工事 | ケーブル、配管・ラック、盤、端末処理、試験 | 距離、容量、重量物の搬入、停電の回数 |
| 受変電設備の更新 | 機器、基礎、揚重、撤去、配線、保護装置の調整 | 機器構成、設置位置、既設設備との接続 |
| EV充電設備の設置 | 充電器、電源工事、基礎、通信、試運転 | 電源の余裕、設置台数、埋設区間、通信方式 |
| 不具合の調査・改修 | 調査、測定、原因箇所の改修、再確認 | 原因の特定状況、調査できる時間、停止の条件 |
幹線は、電源側から各分岐へ電気を送る主要な配線です。動力は、モーターなどの設備を動かす電源を指す場面で使われます。既設の盤や幹線に余裕がない場合は、末端の増設だけで済むかを調査してもらいます。
国土交通省の電気設備改修の標準仕様書も、施工後の試験や既存設備の撤去を扱っています。これは官庁施設向けの基準であり、民間工事すべてに自動適用されるものではありませんが、工事範囲の確認に役立ちます。
見落としやすい付帯費用
機器の購入価格だけを予算にすると、実施できる見込みを誤りやすくなります。次の項目は、含む・含まないを見積書に明記してもらいましょう。
- 仮設・養生:高所作業、搬入経路の保護、作業区画の確保です。
- 停止への対応:停電の準備、仮設電源、夜間・休日の施工などです。
- 建築側の工事:壁や天井の開口・復旧、防水、貫通部の処理などです。
- 撤去・処分:既設機器や配線の撤去、搬出、廃棄物の処理です。
- 調査・試験・書類:事前調査、施工後の測定、完成図、申請・協議などです。
- 管理に必要な費用:安全管理、工程調整、現場管理、会社運営に必要な経費などです。
既存の壁・天井などに手を加える場合は、石綿の事前調査の範囲も確認します。厚生労働省の案内は、電気設備を含む建築設備の改修も対象として説明しています。同じ案内では、請負金額100万円以上の改修工事などは、事前調査の結果を労働基準監督署へ電子システムで報告する対象とされています。調査、報告、必要な対策、撤去・処分を誰が見積もるか整理してください。
工事会社の見積もりとは別に、施設側の保安担当者の立会い、テナント調整、生産停止などの負担があるかも社内で確認します。これらは請負代金と分けて予算上管理すると、二重計上や漏れを防ぎやすくなります。
公開されている単価をどう読むか
国土交通省は公共工事設計労務単価を公表しています。これは公共工事の積算に用いる、職種・都道府県別の所定労働時間内8時間あたりの単価です。事業主負担の法定福利費などの現場管理費や、一般管理費等は含まれていないと明示されています。
参考として、令和8年3月から適用する単価では、東京都の「電工」は34,300円です。全国全職種の加重平均は25,834円で、前年度から4.5%(単純平均)上がっています。これは公共工事の積算の前提となる労務費の目安で、材料費・機器費・諸経費を含む工事費の相場ではありません。地域ごとに金額が違うため、使うときは工事場所の都道府県の値を確認してください。
このため、公表単価と工事会社の請負見積もりを直接比べ、「差額がすべて利益」と考えることはできません。施工数量、必要な作業、機器・材料、管理費などを分けて確認します。
また、国土交通省の積算基準等関連資料は、公共建築工事の算定を扱う資料です。民間工事の定価表として使わず、見積もりの構成を理解する参考にします。
面積単価や器具単価を見る場合も、資料の対象が新築か改修か、機器のみか取付け込みか、撤去や税を含むかを確認します。条件が違う金額を、そのまま社内の上限予算にしないようにしましょう。
概算見積もりを頼むための情報シート
初期段階で全仕様が決まっていなくても、分かることと未確定のことを分ければ相談できます。次の内容を同じ資料にまとめます。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 工事の目的 | 老朽化、設備増設、配置変更、不具合解消など |
| 設置場所 | 建物用途、階、高さ、写真、搬入経路 |
| 工事対象 | 機器名、台数、接続機器の仕様、既設図面 |
| 施工範囲 | 新設・更新・再利用の区分、撤去・復旧の範囲 |
| 運営条件 | 停電できる設備・時間帯、稼働中の区画 |
| 予算条件 | 予算枠の有無、税の扱い、別発注する工事 |
| 未確定事項 | 容量、配線経路、既設の劣化状況など |
「不明な項目は調査費を分けて提示してください。概算に含めた仮定と除外項目も示してください」と添えると、後の増減を確認しやすくなります。現地調査の有償・無償も依頼前に確認してください。
予算化から正式発注までの進め方
最初の概算では、採用する設備の案と、調査で変わり得る範囲を確認します。次に現地調査を行い、数量、経路、施工可能時間、納期を具体化します。最後に仕様をそろえた正式見積もりを取り、工期と引渡し条件を決めます。
- 工種ごとの対象と数量が明確か
- 撤去、復旧、試験、管理の費用が含まれるか
- 見積もりの時点、有効期限、納期の前提が分かるか
- 未調査箇所の扱いと、追加費用が生じる条件が分かるか
- 仕様変更時の承認者と、金額・工期の確認方法を決めたか
値下げが必要な場合は、必要な安全・品質を保ちながら、更新範囲、機器仕様、施工時間帯を変える代替案を相談します。一律に経費を削るより、条件を変えた場合の費用差を出してもらう方が判断しやすくなります。
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地域の会社一覧から候補を探し、対象工事の対応可否と概算相談の条件を各社へ直接確認してください。現地条件を共有してから、工事の範囲と費用を具体化しましょう。



