自家消費型太陽光を工場・事業所の屋根に設置するには、まず昼間の電気使用量に合う出力を決めます。次に、屋根の強度・状態と受電設備を確認します。そのうえで、電力会社との協議・必要な届出を経て工事へ進みます。業者は、同じ屋根での施工実績、使用量データにもとづく提案、屋根と電気設備の両方を確認できる体制で選びます。
自家消費型は、発電した電気を自社の施設で使う方式です。余剰分を売電する方式もありますが、この記事では主に、余った電気を配電線へ流さない「逆潮流なし」の設置を扱います。以下は2026年10月時点の制度にもとづく説明です。費用は規模・屋根・架台で変わるため、金額ではなく内訳と見積もりでの確認点を示します。
自家消費型が向いている施設
| 向いている | 理由 |
|---|---|
| 昼の電気の使用量が多い(工場の稼働、空調、冷蔵) | 設備の出力を使用量に合わせれば、自家消費の割合を高めやすい |
| 平日も休日も稼働している | 休日の発電分も無駄になりにくい |
| 屋根が広く、日当たりがよく、まだ長く使う予定 | パネルを多く置け、屋根の改修のために外す回数が少ない |
逆に、休日が多く昼の使用量が少ない施設では、発電した電気が余ります。余った電気を電力会社の配電線へ流さない(逆潮流させない)設計にする場合は、発電出力を抑えるか、蓄電池にためるなどの対応が必要になります。どれくらい自家消費できるかは、30分ごとの電気の使用量のデータ(電力会社・小売電気事業者から取り寄せられることが多い)をもとに見積もってもらいます。
工事の流れ
- 電気の使用量のデータを集める: 30分ごとの使用量、電気料金の明細
- 現地調査: 屋根の状態・荷重(屋根にかかる重さ)、受電設備、パワーコンディショナー(直流を交流に変える機器)の置き場所
- 提案と見積もり: 出力、自家消費の割合の見込み、逆潮流の有無、架台(パネルを支える台)の工法
- 手続き: 電力会社への申込み・協議、電気事業法の届出(出力・受電の方式による)、補助金の申請(使う場合)
- 工事: 足場、架台・パネルの取り付け、配線、パワーコンディショナー、受変電設備との接続(停電を伴うことがある)
- 検査と引き渡し: 試験・測定、使用前の確認、操作と監視の説明、保証書・竣工図(完成した設備の図面)の受け取り
- 運転・保守: 発電量の監視、点検、パネルの清掃
補助金: 利用する場合は、契約・発注・着工の前に公募要領を確認します。制度の探し方は設備更新の補助金の調べ方で扱います。
出力によって変わる電気事業法の扱い
電気事業法では、発電設備の出力だけでなく、接続先の受電設備によっても区分が変わります。以下は一般的な区分です。同じ構内の他の発電設備との接続などで扱いが変わるため、設備全体で確認します。
| 施設の受電の方式・太陽光の出力 | 扱い | 主な決まり |
|---|---|---|
| 低圧受電で、太陽光が10kW未満 | 一般用電気工作物 | 技術基準に適合させ、対象作業は電気工事士が行う |
| 低圧受電で、太陽光が10kW以上50kW未満 | 発電設備部分は小規模事業用電気工作物 | 技術基準への適合維持、使用開始前の基礎情報の届出、使用前自己確認と結果の届出 |
| 太陽光が50kW以上、または高圧受電の施設に接続する | 自家用電気工作物(高圧受電施設では出力にかかわらず構内の設備の一部) | 保安規程、電気主任技術者の選任・外部委託など。既設施設では変更の手続きを確認する |
使用前自己確認は、技術基準への適合などを設置者が確認し、結果を届け出る手続きです。太陽光は原則として10kW以上2,000kW未満が対象で、高圧受電施設に設置する10kW以上50kW未満の設備も含まれます。使用開始前に確認と届出を済ませます。2,000kW以上は工事計画の届出・使用前自主検査など別の手続きになります(太陽光発電協会の法規一覧)。
小規模事業用電気工作物の基礎情報は、設置者・設備・保安体制などを届け出るものです。環境省の制度整理資料でも、新設は使用開始前、変更・廃止等にも届出が必要と示されています。
電力会社との協議と、屋根の確認
電力会社(一般送配電事業者)との協議
太陽光を構内の電気設備につなぐときは、配電線に電気を流すか(逆潮流ありか、なしか)によって、電力会社への申込み・協議の内容が変わります。電力会社の送配電網(系統)につなぐ「系統連系」を行う自家消費設備は、逆潮流なしでも申込みを確認します。東京電力パワーグリッドの高圧需要側の案内でも、自家消費の発電設備の設置・変更に申込みと資料提出が示されています。高圧受電の施設では、逆潮流を防ぐ保護装置(逆電力継電器など)の設置が求められることがあります。協議には期間がかかるため、工事の日程に入れておきます。
申込みの窓口・必要書類・協議期間は地域の一般送配電事業者と確認し、見積もりや工程表に反映します。
屋根の確認
- 荷重: パネルと架台の重さに屋根・建物が耐えられるか。古い建物では、構造の確認が必要になることがあります。
- 屋根の残りの寿命: 屋根の葺き替え・防水の改修が近いなら、先に改修するか、同時に行います。設置後に屋根を直すには、パネルを外して戻す費用がかかります。
- 石綿(アスベスト): 既存屋根の穴あけ・切断・撤去などを伴う場合は、施工業者に石綿含有建材の事前調査と、結果に応じた対策を確認します。行政への調査結果の報告は一定規模以上の工事が対象で、報告対象外でも事前調査は必要です。調査・対策・必要な報告の担当、費用、工程を発注前に決めます(厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイト)。
- 雨漏り: 屋根に穴をあけて架台を固定するか、穴をあけない工法か。雨漏りしたときの保証を誰が持つか。
- 風・雪: 地域の風の強さ・雪の量に合った架台か。
- 避雷設備: 屋上の避雷設備の保護範囲や、導線との位置関係。
費用の内訳と、見積もりで確かめる点
費用は出力・屋根の形・架台の工法・受変電設備の改修の有無で大きく変わります。次の内訳を同じ条件で見積もってもらいます。
| 費用の項目 | 中身 | 確かめる点 |
|---|---|---|
| パネル・パワーコンディショナー | 機器の本体 | メーカー、出力、保証の年数(製品・出力) |
| 屋根の調査・改修 | 強度・防水の確認、必要な石綿の事前調査・対策 | 調査・報告の担当、対策工事の範囲と工程 |
| 架台・取り付け | 屋根への固定の部材と施工 | 屋根に穴をあけるか。雨漏りの保証 |
| 電気工事 | 直流・交流の配線、接続箱、受変電設備との接続、逆潮流を防ぐ装置 | 停電を伴う作業の日時、電気主任技術者との調整 |
| 足場・揚重(機器や資材のつり上げ) | 足場、クレーン | 屋根の改修と足場を共用できるか |
| 監視装置 | 発電量・使用量の見える化 | 月額費用の有無 |
| 申請・届出 | 電力会社、電気事業法、補助金の書類 | 誰が作り、誰が出すか |
| 保守 | 定期点検、故障対応 | 保守の費用、点検の頻度、駆けつけの体制 |
比べるときの注意: 見積もりに書かれた「年間の発電量」や「削減できる電気代」は、前提(日射のデータ、パネルの向き・角度、自家消費の割合、電気料金の単価)で変わる見込みの数字です。前提を書いてもらい、同じ前提で比べてください。
業者を選ぶチェックリスト
- 工場・事業所の屋根への設置実績(同じ屋根の種類:折板・スレートなど)
- 30分ごとの使用量データをもとに、自家消費の割合を試算してくれるか
- 屋根の荷重・状態の確認を、根拠を示して行うか
- 既存屋根の穴あけ・切断・撤去などを伴う場合、石綿の事前調査・対策と必要な報告の担当、費用、工程が明確か
- 電力会社との協議、電気事業法の届出を代わりに準備してくれるか
- 高圧受電の施設では、電気主任技術者と調整してくれるか
- 工事範囲・金額に応じた建設業許可(電気工事業。屋根工事を伴う場合はその体制も)と、対象設備についての電気工事業の登録・通知(建設業許可業者のみなし登録・みなし通知を含む)
- 雨漏りを含む施工の保証と、機器の保証の窓口が明確か
- 設置後の保守・点検・故障対応の体制
関連する記事
この記事は、屋根に設置する自家消費型太陽光の計画と工事に絞っています。停電の準備、保安担当者の役割、蓄電池などの詳細は、次の記事で扱います。
- 接続工事で停電を伴う場合は、受変電設備の工事の停電への備えをご覧ください。
- 蓄電池を組み合わせる場合は、事業所への蓄電池の設置をご覧ください。
- 屋上の避雷設備との関係は、避雷設備の工事で説明しています。
- 電気主任技術者の役割は、電気主任技術者とはをご覧ください。
- 電気の基本料金を下げるデマンド対策は、デマンド対策とはで解説しています。
- 設備更新の補助金の探し方は、設備更新の補助金の調べ方をご覧ください。
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自家消費型太陽光の設置を相談できる会社は、地域の電気工事会社の一覧から探せます。一覧では、建設業許可の業種や有効期限などの公表情報を確認できます。太陽光の設置実績は、各社に直接たずねてください。



