屋上の避雷針に雷が落ち、外壁に沿って地中へ伸びる導線と、地上に立つヘルメット姿の作業者が描かれている場面のイラスト
イメージ図(AIで生成)
発注・費用

避雷設備の工事|設置が必要な建物と、費用を見積もりで確かめる点

目次
  1. 避雷設備が必要な建物
  2. 避雷設備の工事の種類
  3. 費用の内訳と、見積もりで確かめる点
  4. 依頼先の選び方
  5. 工事の流れ
  6. 関連する記事
  7. 地域の電気工事会社を探す

避雷設備は、避雷針や導線、地中の電極などで、雷の電流を安全に地面へ流す設備です。高さ20mを超える建物には、建築基準法第33条に基づき設置が求められます。また、危険物の規制に関する政令では、原則として指定数量の10倍以上の危険物を扱う製造所・貯蔵倉庫などに設置が求められます。どちらも「周囲の状況によって安全上支障がない場合」は除かれます。それ以外の建物でも、落雷の多い地域や、止められない設備がある施設では、任意で設置・改修することがあります。費用は建物の高さ・形・保護の範囲・接地の状態で大きく変わるため、この記事では金額ではなく、費用の内訳と、見積もりで確かめる点を説明します(2026年10月時点)。

避雷設備が必要な建物

法律で設置が求められるのは、主に次の2つです。危険物の「指定数量」は、物質の種類ごとに定められた規制の基準量です。

根拠 対象 求められること
建築基準法 第33条・施行令 第129条の14 高さ20mを超える建築物 建物の高さ20mを超える部分を、雷撃から保護するように避雷設備を設ける
危険物の規制に関する政令 第9条など 指定数量の倍数が10以上の製造所、指定数量の10倍以上の危険物の貯蔵倉庫(屋内貯蔵所)、指定数量の倍数が10以上の屋外タンク貯蔵所 など 総務省令で定める避雷設備を設ける
  • どちらも、条文に「周囲の状況によって安全上支障がない場合においては、この限りでない」というただし書きがあります。ただし、単に隣に高い建物があるだけで設置不要とは判断できません。例外に当てはまるかは、設計者を通じて確認検査機関・所轄消防に確認してください。自社で決めつけないでください。
  • 施行令第129条の15は、雷の電流を建物に被害を与えず、安全に地中へ流せる構造を求めています。国土交通大臣が定めた構造方法、または大臣の認定を受けたものとする必要があります。腐食しやすい部分には、腐食しにくい材料や防食の措置も求められます。

建築基準法に基づく構造方法の告示は、日本産業規格「JIS Z 9290-3:2019」の外部雷保護システムに適合する構造へ改正され、2025年4月1日に施行されました。旧JISによる経過措置は、2026年3月31日までに建築物の工事に着手したものが対象です。判断の基準は避雷設備の工事の着手日ではありません。既存建築物への適用や改修範囲は、増改築などの内容に応じて設計者・確認検査機関に確認してください。危険物施設には別の規定があるため、所轄消防にも適用基準を確認します。

法律の対象外でも検討することが多い施設

  • 屋上に通信機器・アンテナ・太陽光パネル・空調の室外機を多く置いている建物
  • サーバー室・制御盤など、雷による停止や故障の影響が大きい設備がある施設
  • 平地の中に一棟だけ高い建物が立っている、落雷が多い地域にあるなど、雷を受けやすい立地

なお、建物に落ちた雷の電流を安全に地中へ流す「外部雷保護」(避雷針・避雷導線・接地)と、電源線や通信線から入ってくる雷サージ(雷による異常な電圧)から機器を守る「内部雷保護」(SPD=サージ防護デバイスの設置など)は別の対策です。機器の故障を減らしたいなら、内部雷保護もあわせて相談します。

避雷設備の工事の種類

工事 内容 よくあるきっかけ
新設 受雷部(雷を受ける突針や屋根に沿わせる導体など)、引下げ導線(雷電流を地面へ流す導線)、接地極(地中に設ける電極)を新しく設ける 新築、増築で高さ20mを超える、危険物の取扱量が増える
改修・更新 腐食した突針・導線・金具の交換、接地極の打ち増し 点検での指摘(腐食・断線・接地抵抗(電流が地面へ流れる際の抵抗)の上昇)、屋上の防水工事・改修
撤去・移設 屋上の設備の入れ替えに合わせて、受雷部を移す 屋上の設備更新、看板・アンテナの設置
内部雷保護の追加 分電盤・通信機器にSPDを付ける、等電位ボンディング(金属部分どうしを電気的につなぐ) 雷のあとの機器の故障

屋上の防水工事と同時に考える: 避雷導線や支持金具は屋上やパラペット(屋上の立ち上がり)に取り付けられていることが多く、防水工事のときに一度外すことがあります。防水工事の見積もりに、避雷設備の脱着と復旧、復旧後の測定が入っているかを確認してください。

費用の内訳と、見積もりで確かめる点

費用は建物ごとの条件で大きく変わり、公表された相場の資料も見当たらないため、この記事では金額の目安を示しません。代わりに、見積書に出てくる項目と、確認する点をまとめます。

費用の項目 中身 見積もりで確かめる点
調査・設計 保護範囲の検討、図面の作成、既存設備の調査 保護範囲をどの規格・方法で検討したか。図面が成果物として渡されるか
受雷部 突針、棟上げ導体、支持金具 材質(ステンレス・銅など)と数量
引下げ導線 屋上から地面までの導線、支持金具 本数・長さ。外壁に沿わせるか、構造体の鉄骨・鉄筋を利用するか
接地工事 接地極(地中に打ち込む電極)、接地抵抗の測定 目標の接地抵抗値と、届かないときの追加工事(打ち増し)の扱い
足場・高所作業車 外壁・屋上の作業のための足場やゴンドラ 足場が別途か込みか。外壁の改修と時期を合わせられるか
撤去・処分 古い突針・導線の撤去と処分 撤去費・処分費が含まれているか
申請・書類 確認申請・消防の手続きの資料、竣工図(完成した設備の図面)、試験成績書 誰が作り、誰が提出するか
  • 相見積もりでは、同じ条件で頼む: 保護の範囲・規格・接地抵抗の目標値をそろえないと、金額を比べられません。
  • 「一式」が多い見積書: 受雷部・導線・接地のそれぞれの数量が分かるよう、内訳を出してもらいます。

依頼先の選び方

避雷設備の工事は、電気工事会社が請け負うことが多い工事です。ただし、必要な建設業許可の業種は、電気設備・接地の工事、支持構造物の製作・設置など、請け負う具体的な内容で確認します。避雷設備という名称だけで一律に判断せず、見積もりの施工範囲と許可業種が対応するかを確認してください。依頼先を比べるときは、次の点を確認します。

依頼先を選ぶチェックリスト

  • 避雷設備の新設・改修の実績があるか(高さ・用途の近い建物)
  • 請け負う施工範囲に対応する建設業許可が必要かを確認し、必要な場合は許可業種を照合したか(許可要否の基準)
  • 接地抵抗の測定器を持ち、測定の記録を出せるか
  • 足場・高所作業の安全の体制があるか
  • 防水・外壁の工事と同時に行う場合、防水業者との調整を引き受けられるか
  • 内部雷保護(SPD)についても提案できるか
  • 工事後の点検(接地抵抗・腐食の確認)を続けて頼めるか

高圧受電の施設では、避雷器(LA。異常な電圧から設備を守る機器)など、受変電設備まわりの雷対策も確認します。これらは電気主任技術者(施設の電気の保安を監督する人)の管理の範囲です。屋上の避雷設備の工事でも、停電や受変電設備に関わる作業がある場合は、電気主任技術者に事前に相談してください。

工事の流れ

  1. 現状の確認: 既存の避雷設備の有無、図面、前回の点検の記録をそろえる
  2. 現地調査: 依頼先が屋上・外壁・接地の状態を見る
  3. 見積もりと設計: 保護範囲と仕様を決める。法律の対象の建物では、設計者や確認検査機関、危険物施設では消防への手続きが必要か確認する
  4. 工事: 足場の設置、受雷部・導線・接地の施工
  5. 測定と引き渡し: 接地抵抗の測定、試験成績書・竣工図の受け取り
  6. 維持管理: 定期的に腐食・断線・接地抵抗を確認する

危険物施設(製造所・貯蔵所など)では、避雷設備の変更が施設の変更の許可や届出に関わることがあります。工事の前に、所轄の消防本部に確認してください。

関連する記事

この記事は、避雷設備の設置・改修の要否と発注条件を扱います。受変電設備の更新、停電計画、見積書全般の比較は、それぞれの記事をご覧ください。

地域の電気工事会社を探す

避雷設備の工事を相談できる会社は、地域の電気工事会社の一覧から探せます。一覧から会社ページを開くと、建設業許可の業種や有効期限などの公表情報を確認できます。避雷設備の実績は、各社に直接たずねてください。

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出典・参考

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