電気主任技術者は、キュービクル(高圧受電設備)などの電気設備の保安を監督する人です。保安とは、設備の安全を確保することです。高圧で受電している工場・ビル・店舗などの設置者は、原則として電気主任技術者を選ぶ(選任する)義務があります。ただし、7,000V以下で受電する施設は、国(産業保安監督部)の承認を受けて、保安の業務を電気保安法人や電気管理技術者に外部委託できます。委託契約を結ぶだけで手続きが完了するわけではなく、設置者が承認の手続きを進めます。
なお、電気主任技術者は「保安の監督」をする人で、その免状だけで工事の作業資格を得られるわけではありません。設備を直す・取り替える工事は、電気工事業者(電気工事士)が行います。この記事では、2026年10月時点の確認事項として、経産省の制度説明資料等で確認できた制度の概要と、役割の違いを説明します。最新規則の細目で確認できていない事項は本文中に注記しています。
電気主任技術者が必要な施設
電気事業法では、電気設備を「電気工作物」と呼びます。このうち、工場・ビルなどが高圧(6,600Vなど)で受電する設備は、多くが自家用電気工作物にあたります。
この記事で扱う高圧受電の自家用電気工作物の設置者には、次の義務があります(電気事業法)。事業用電気工作物でも、小規模事業用電気工作物などは適用が異なります。
| 義務 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 技術基準への適合 | 設備を国の技術基準に合う状態に保つ | 第39条 |
| 保安規程の届出 | 点検・巡視などのルールを定め、使用開始前に届け出る | 第42条 |
| 主任技術者の選任 | 免状を持つ人から主任技術者を選び、届け出る | 第43条 |
つまり、電気工作物の設置者が、設備の保安を確保する責任を負います。管理会社やテナントに任せている場合でも、誰が設置者として届け出ているかを一度確かめておくと安心です。
免状の種類と、監督できる範囲
電気主任技術者の免状は、第一種・第二種・第三種の3つです。監督できる範囲は、電圧や発電所の出力などで分かれます(電気事業法施行規則 第56条)。
| 免状 | 監督できる範囲(主なもの) |
|---|---|
| 第一種電気主任技術者 | すべての事業用電気工作物 |
| 第二種電気主任技術者 | 電圧17万V未満 |
| 第三種電気主任技術者 | 電圧5万V未満の需要設備など(出力5,000kW以上の発電所は対象外。蓄電所等を併設する場合は設備別に範囲を確認) |
需要設備(施設内で電気を使うための設備)として使う、一般的な高圧受電(6,600V)のキュービクルであれば、第三種の範囲に入ります。
選任・外部委託の代表的な方法
電気主任技術者の選任や外部委託には、次のような方法があります。
| 形 | 内容 | 向いている施設 |
|---|---|---|
| 自社選任 | 自社の社員(免状を持つ人)を選任する | 大規模な工場など、常に設備を見る人が必要な施設 |
| 外部選任 | 原則として選任事業場に常時勤務し、所定の勤務・契約条件を満たす社外の免状保有者を選任する | 社内に有資格者がいないが、常時勤務できる社外の有資格者を確保できる施設 |
| 外部委託 | 保安の業務を電気保安法人・電気管理技術者に委託し、国の承認を受ける(選任しない) | 7,000V以下で受電する中小規模の施設 |
| 許可選任 | 国の許可を受けて、免状のない人を選任する | 一定の規模以下の施設に限られる |
この表は代表的な方法の整理です。兼任や統括など、別の選任形態もあります。「外部選任」と「外部委託」は名前が似ていますが、別の制度で、要件も違います。外部委託は「選任しない」ことを国が承認する制度です。
外部選任は、免状の有無だけで決められません。関東東北産業保安監督部の令和4年3月の説明資料(17ページ)では、常時勤務に加え、契約に「設置者が主任技術者の意見を尊重する」「保安に従事する者がその指示に従う」「主任技術者が職務を誠実に行う」旨を定めると説明しています。実際の勤務形態と契約内容が現行の要件に合うかは、届出前に所轄の産業保安監督部へ確認してください。
外部委託のしくみ
対象になる設備
この記事で扱う工場・ビル等の需要設備では、受電電圧7,000V以下が外部委託の対象となる条件です。受電電圧だけで自動的に認められるわけではなく、契約先の資格・実務経験、点検体制などについても承認を受けます。発電設備や蓄電所を併設する場合は、その設備を含めた適用条件を所轄の産業保安監督部に確認してください。
委託できる相手
委託先は、次のどちらかです(施行規則 第52条の2、第53条)。
- 電気管理技術者: 免状を持ち、国の告示の要件(実務の経験など)を満たす個人事業者
- 電気保安法人: 要件を満たす人(保安業務従事者)をそろえた法人
承認の条件(主なもの)
施設の設置者が「保安管理業務外部委託承認申請書」を産業保安監督部などに出し、承認を受けます。申請前に、次の点を所轄の産業保安監督部と確認します。
- 委託契約が、保安管理業務を委託するだけの契約であること
- 点検を、国の告示で定める頻度で行うこと
- 事故などの非常時の連絡や、設置者と委託先それぞれの義務と責任が契約に書かれていること
- 委託先の連絡場所が、施設に遅れずに駆けつけられる場所にあること
承認を受けた設置者にも設備の保安を確保する責任が残ります。委託先の意見を尊重し、点検で「この機器は更新が必要」と指摘されたら、放置せずに対応を検討することが求められます。
電気主任技術者と工事会社の役割の違い
キュービクルの更新や修理を考えるとき、混同しやすいのがこの2者です。
| 項目 | 電気主任技術者(委託先を含む) | 電気工事会社 |
|---|---|---|
| 役割 | 保安の監督。点検し、不具合や更新の必要を設置者に伝える | 工事をする。機器の取り替え・配線・改修 |
| 必要な資格 | 電気主任技術者の免状(外部委託は要件あり) | 電気工事業法の対象では登録・通知(建設業許可業者はみなし登録・みなし通知に係る届出等)。作業者には工事に応じた資格 |
| 契約の形 | 保安管理業務の委託契約(継続) | 工事ごとの請負契約 |
| 工事のときの関わり | 工事の計画・停電の段取り・工事完了後の確認に立ち会う | 施工し、試験の結果を報告する |
工事の作業者には、設備と作業に合う資格を確認します。詳しい範囲は電気工事士の資格の確認を参照してください。委託先の電気主任技術者が工事会社を紹介してくれることもありますが、依頼先は自分で選べます。複数の会社から見積もりを取り、保安の委託先にも内容を見てもらうと、抜けを防げます。
委託契約を結ぶ・見直すときのチェックリスト
新規の委託や委託先の変更を相談するときは、現在の保安規程、選任・外部委託の状況が分かる書類、設備図面、直近の点検報告書を手元にそろえます。承認の手続きと業務開始日を確認し、保安管理が途切れない日程を委託先と相談してください。
- 委託先は電気保安法人か、電気管理技術者(個人)か
- 月次点検・年次点検の頻度と、点検の内容が契約書に書かれているか
- 事故・停電のときの連絡方法と、駆けつけるまでの目安が決まっているか
- 点検の結果(報告書)を、いつ・どの形で受け取るか
- 更新や修理が必要と指摘されたとき、工事の手配は誰がするか(設置者か、委託先が取り次ぐか)
- 工事のときの立会い・停電の操作の費用は、委託料に含まれるか、別料金か
- 保安規程の内容と、契約の内容がそろっているか
- 外部委託の承認申請の担当と、承認後に業務を始める日程を確認したか
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工事を頼む会社を探す
点検で更新や修理を指摘されたら、工事を頼む会社を選ぶ段階です。地域の電気工事会社は、会社をさがす から地域を選んで確かめられます。許可の業種や有効期限も、あわせて確認してください。この一覧は工事会社を探す入口です。保安管理の外部委託先としての要件や承認の条件は、候補の委託先と所轄の産業保安監督部に確認します。



