店舗・テナントの電気工事は、物件で使える電気容量と工事区分を先に確認し、機器表と内装図をそろえて進めることが基本です。内装の完成後に電源不足や配線の抜けが分かると、天井・壁のやり直しにつながります。進める順序は、物件条件の確認、機器・配置の確定、内装との分担、見積もり・承認、施工、開業前の運転確認です。開業日から逆算し、建物側の承認や共用部の工事も工程に入れましょう。
この記事は2026年10月時点の制度を踏まえ、出店・改装を発注する法人向けに説明します。工事の金額は面積だけでは決められないため、費用の内訳と比較条件を扱います。
最初に物件側の条件と工事区分を確認する
管理会社や建物所有者から、貸室の図面、設備の引渡し条件、工事の手引き、申請方法を受け取ります。前のテナントが使っていた配線や照明が残っていても、そのまま使えると判断せず、所有者と状態を確認します。
工事区分とは、工事ごとに、誰が発注し、どの会社が施工し、誰が費用を負担するかを分けた取り決めです。A工事・B工事・C工事と表記される物件もあります。ただし、A・B・Cの名称だけで判断せず、物件の工事区分表と契約書を項目ごとに読み合わせます。
| 管理会社への確認事項 | 決めておく内容 |
|---|---|
| 電源の引渡し | 接続できる場所、電圧・相数、使える容量 |
| 共用部との境目 | 幹線、盤、計量器、制御設備の担当 |
| 施工会社の条件 | 指定会社の有無、承認が必要な工事 |
| 施工時間 | 騒音作業、停電、搬入、休館日の条件 |
| 残置設備 | 所有者、使用・撤去の承認、保守責任 |
| 退去時の扱い | 残す設備、撤去する範囲、図面の保管先 |
相数は、単相・三相といった電源方式の区分です。幹線は、建物内の主な盤から各分電盤などへ電気を送る主要な配線です。分電盤は、電気を照明やコンセントなどの回路へ分ける設備です。
建物全体の停電や電源の増設が必要な場合は、自社の区画だけでは日程を決められません。電気工事会社と管理会社をつなぐ窓口を、初期段階で決めます。
機器表と配置図で必要な電源を確定する
厨房、空調、給湯、冷蔵庫、看板、レジ、通信装置まで、電気を使う機器を一覧にします。「コンセントを何個付けるか」より先に、何を接続するかを確認します。
機器表には、機器名、型式、台数、電源仕様、設置位置、使う時間、専用回路が必要かを記載します。専用回路は、特定の機器などに電源を供給するために分ける回路です。必要性は機器の仕様と設計に基づいて確認してもらいます。
店舗の配置図には、コンセントの位置と高さ、照明の操作場所、看板への配線、レジ周辺の電源と通信を記入します。内装設計者、厨房・空調などの設備担当、電気工事会社で同じ図面を使うようにします。
機器が未定の場合は、未定のまま最終配線へ進めません。仮の仕様で設計するなら、その前提と、型式が変わった際の再確認期限を共有します。
内装工事と電気工事の境目を表にする
各行に担当会社と完了確認者を記入し、内装・電気・設備の関係者で共有します。
| 工事項目 | 分担で決めること | 担当会社/完了確認者 |
|---|---|---|
| 天井・壁の開口 | 穴を開ける会社、補強、仕上げを復旧する会社 | [記入]/[記入] |
| 照明 | 器具の選定・支給、取付け、調光の設定 | [記入]/[記入] |
| 空調・厨房 | 機器の据付け、電源接続、試運転の立会い | [記入]/[記入] |
| レジ・通信 | 電源、通信配線、機器設定、通信できるかの確認 | [記入]/[記入] |
| 防災設備 | 既設への影響確認、変更設計、関係先との協議 | [記入]/[記入] |
| 看板 | 本体の施工、電源、タイマー、点灯確認 | [記入]/[記入] |
機器支給とは、発注者などが機器を用意し、施工会社へ取り付けを依頼することです。内装会社への一括発注でも、各工事の担当と完成確認の責任者を明確にします。機器支給の場合は、納入遅れ、初期不良、付属品不足の際の連絡先も決めます。
壁や天井などを改修する際は、石綿(アスベスト)が含まれるかの事前調査の範囲と結果を確認します。厚生労働省は、照明や配線を含む建築設備の改修でも事前調査などが必要になることを案内しています。図面だけを見て「小さな電気工事だから対象外」と判断しないようにします。
承認と協議を施工前に済ませる
管理会社への工事申請、停電や搬入の承認、必要な電力契約の手続きについて、提出者と期限を工程表に書き込みます。工事会社が資料を作る場合も、発注者側の承認が必要な書類を区別します。
消防関係は、用途や間仕切り、設備変更の内容を示して管轄消防署へ相談します。横浜市西消防署は、新たなテナントの使用開始届に、配置図、各階平面図、消防用設備等の設計図書を添付することを案内しています。テナント変更により消防設備が新たに必要となる場合や、設備工事に伴う届出もあるため、着工前に相談します。この案内は横浜市のものです。様式や期限は全国一律と考えず、所在地の窓口で必要事項を確認してください。
電気工事会社の確認では、必要な建設業許可、電気工事業法の登録・通知など、現場で作業する人の資格を分けて確認します。制度の区分は電気工事業の登録と建設業許可の違い、担当者の確認は電気工事士の資格確認を参照してください。
見積もりから開業までの進め方
- 現地調査と設計で、既設設備、機器表、工事区分の整合を確認します。
- 見積もりで、盤・配線・器具、既設撤去、建築復旧、仮設、試験、申請資料作成の範囲をそろえます。
- 承認と発注で、器具の納期と他工事の施工順を確定します。
- 配線と内装を進め、天井や壁を閉じる前に、配線位置と必要な開口を関係者で確認します。
- 機器接続と試験を行い、分電盤の表示や照明・看板の操作を確認します。
- 開業前の運転確認で、実際の機器を同時に使い、営業に必要な動作を確かめます。
工事完了日を開業日と同じ日にしないよう、動作確認と是正の時間を相談します。工事範囲の追加は、金額と開業日への影響を確認し、発注者が承認してから進めるルールにします。
引渡しでは、配線・器具の完成図、分電盤の回路表、試験記録、取扱説明書、保証窓口を受け取ります。スタッフにも照明の操作や異常時の連絡先を伝え、管理会社と自社の両方で資料を保管します。
出典
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この記事は店舗内装と電気工事の分担を扱います。照明の交換仕様や空調機器の更新、見積もり全般の比較は次の記事で確認してください。
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