電気工事・設備工事の担い手(実際に工事をする技能者)が確保しにくい状況は、国の公表データからも読み取れます。ハローワークでの「電気工事従事者」の有効求人倍率は、2026年8月に3.23倍でした(常用・パートを含む、全国)。有効求人倍率は、募集中の求人数を仕事を探している人数で割った値です。同じ職業別表の職業計(すべての職業の合計、1.06倍)の約3倍で、求職者1人に対して3件以上の求人がある計算です。また、建設業の技能者は2024年に300万人で、1997年の455万人から3割以上減り、同じ2024年の建設業就業者の36.7%が55歳以上です。
管工事・配管工だけの求人倍率は、下記の表からは分けて示せません。電気工事の求人倍率と、配管従事者を含む広い職業区分、建設業全体の就業者・年齢を区別して読みます。
この記事では、全国の公表データを使い、担い手の不足を数字で整理します。資料の確認は2026年10月時点です。求人は2026年8月、就業者・年齢は2024年のデータです。就業者については、過去年と同じ国交省の集計区分で人数と年齢構成を確認できた資料を採用しており、最新年の状況は示していません。地域ごとの数は扱いません。電気工事の会社の数の推移は、電気工事業の許可業者数の推移で扱います。
使うデータと、その限界
| データ | 公表元 | わかること | 限界 |
|---|---|---|---|
| 一般職業紹介状況(職業別の求人倍率) | 厚生労働省 | 職業ごとに、求人と求職のどちらが多いか | ハローワークを通した求人・求職だけ。民間の求人サイトや、会社どうしの紹介は入らない |
| 労働力調査(建設業の就業者・技能者・年齢) | 総務省(国土交通省が集計した資料を使用) | 建設業で働く人の数と年齢の構成 | 建設業全体の数で、電気工事・管工事だけの数ではない |
- この記事では、電気工事に絞った数字は求人倍率だけです。就業者の数と年齢は、建設業全体の数字です。
- 「電気工事士の資格を持つ人の数」と「実際に電気工事の仕事をしている人の数」は別のものです。資格者の数だけでは、担い手の多い少ないは判断できません。
求人倍率で見る電気工事の担い手不足
厚生労働省の「一般職業紹介状況」の参考統計表から、2026年(令和8年)8月の全国の数字を抜き出しました。常用は、雇用期間の定めがないか、4か月以上の雇用期間を定めた仕事です(季節労働を除きます)。表にはパートタイムも含みます。
「原数値」は集計したままの数値、「季節調整値」は季節による変動を調整した数値です。以下では原数値を使います。
| 職業 | 有効求人数 | 有効求職者数 | 有効求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 職業計(すべての職業) | 2,028,673 | 1,914,602 | 1.06倍 |
| 建設・採掘従事者 | 115,371 | 22,633 | 5.10倍 |
| うち 建設躯体工事従事者(建物の骨組みを造る職種) | 19,403 | 2,353 | 8.25倍 |
| うち 建設従事者(建設躯体工事従事者を除く) | 31,128 | 7,122 | 4.37倍 |
| うち 電気工事従事者 | 21,601 | 6,680 | 3.23倍 |
- 有効求人倍率は、求人の数を、仕事を探している人の数で割ったものです。1倍を超えると、求人のほうが多いことを表します。
- 電気工事従事者の有効求人倍率は、前年の同じ月より0.17ポイント低い値でした。それでも、職業計の約3倍です。
- パートを除いた常用の求人に限ると、電気工事従事者の有効求人倍率は3.63倍でした。
- 日本標準職業分類では、配管従事者は「建設従事者(建設躯体工事従事者を除く)」に含まれ、この区分は4.37倍です。この区分には大工や左官などほかの職種も入るため、配管工だけの数字ではありません。
読み方の注意: 職業別表は1か月分の原数値です。報道発表の総合倍率1.18倍(2026年8月の季節調整値)とは集計・調整の条件が異なるため、そのまま比較しないでください。季節による増減があるため、年ごとの比較には、同じ月どうし、または年度の平均で比べてください。また、ハローワーク以外の採用経路は入っていません。
就業者の数と年齢で見る建設業の担い手
国土交通省が総務省「労働力調査」を基に算出した資料では、建設業で働く人の数は次のように変わっています。
| 区分 | 1997年(平成9年) | 2010年(平成22年) | 2024年(令和6年) |
|---|---|---|---|
| 建設業就業者 | 685万人 | 504万人 | 477万人 |
| うち 技術者 | 41万人 | 31万人 | 39万人 |
| うち 技能者 | 455万人 | 331万人 | 300万人 |
- 就業者全体は、ピークの1997年から約3割減りました。
- 技能者(現場で作業をする人)は455万人から300万人へ、約34%減っています。
- 一方、技術者(施工管理などを担う人)は2010年の31万人から2024年の39万人に増えています。
年齢の構成(2024年)
- 建設業就業者のうち、**55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%**です。
- 年齢構成からは技術の継承と人材確保の必要性がうかがえます。ただし、この比率は技能者だけでなく建設業就業者全体の値で、引退時期や今後の人数を直接予測するものではありません。
発注者・元請けへの影響と、今からできること
データから見えるのは、「2026年8月の電気工事従事者の求人倍率は職業計より高く、2024年の建設業全体では高年齢層の割合が高い」という状況です。これだけで、個別の会社の受注余力や費用上昇の原因までは分かりません。発注者は、候補の各社に次の点を確認して備えましょう。
| 依頼時に確認したいこと | 発注側でできること |
|---|---|
| 現地調査・見積回答はいつ可能か | 依頼の内容(範囲・希望の時期・現場の条件)を最初からそろえて送る。見積依頼書の書き方 |
| 希望時期に施工体制を組めるか | 早めに相談し、工程表と主要機器の納期を確認する。設備工事のスケジュールの立て方 |
| 追加工事の対応範囲・日程はどう決めるか | 工事の前に、範囲と追加の扱いを決めておく。工事を頼む前に決めておくこと |
| 協力会社の候補を確保できているか(元請け) | 探す範囲を広げ、関係を長く続ける。協力会社が見つからないときの対策 |
| 見積金額の条件・有効期限は何か | 必要な労務費の内訳と見積もりの有効期限を確認する。費用の項目は法人の電気工事の費用の目安を参照 |
依頼先との付き合い方のチェックリスト
- 工事の時期が決まったら、早めに候補の会社へ相談しているか
- 依頼の内容を文書にまとめ、何度もやり取りしなくて済むようにしているか
- 定期点検や小さな修理も、同じ会社に続けて頼めるか検討したか
- 支払いの条件・時期を、相手が受けやすい形にしているか
- 1社だけに頼らず、相談できる会社を複数持っているか
関連する記事
この記事は、技能者・担い手の数を扱いました。次のテーマは、それぞれの記事で詳しく解説しています。
- 電気工事の会社の数(許可業者数)の推移 → 電気工事業の許可業者数の推移
- 市場の規模・工事の量の動き → 電気工事・設備工事の市場の動き
- 2024年問題と協力会社 → 2024年問題と協力会社
- 電気工事士の資格の確かめ方 → 電気工事士の資格の確認方法
- CCUS(建設キャリアアップシステム)→ 協力会社とCCUS
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